なぜ「努力しているのに変わらない」のか
筋トレに真面目に取り組んでいるのに、成果が出ない人は多い。理由は、本人の根気ではなく「やり方の前提」が古いことにある。
かつて主流だった“重い重量をひたすら挙げる”という常識は、最新の研究によって書き換えられつつある。
重要なのは重量ではなく、筋肉が受けた「総負荷量」。そして、24時間続く筋合成の仕組み、フォームを決める生体力学、続けられない理由の科学──これらを踏まえるだけで、筋トレは驚くほど効率化する。
本書が示すのは、感覚や根性ではなく“エビデンスで組み立てる筋トレ”。
無駄を削り、確実に積み上がる方法だけを拾い直すことで、誰でも成果の出るルートに戻れる。
科学が教える「正しく効く筋トレ」の核心
筋肥大も筋力向上も、結局は身体のなかで起きている反応の積み重ねだ。その仕組みが明確になると、やるべき選択は自然に絞られていく。
総負荷量がすべての起点になる
重さよりも「重量×回数×セット数」で決まる総負荷量が成果を左右する。
低重量でも回数を稼げば高重量と同じ筋肥大効果が得られるという報告が複数出ている。
“重くできないから伸びない”は、もはや過去の発想だ。
フォームは感覚ではなく生体力学で決まる
スクワット、ベンチプレス、デッドリフトのフォームは、関節角度・重心・モーメントによって筋活動が変わる。
「どこに効いているか」ではなく、どこに負荷が載る設計になっているかが重要。
経験則だけに頼らず、動きの構造を理解すると迷いが消える。
タンパク質の“24時間の合成”を利用する
筋合成はトレーニング直後だけでなく、24時間上昇し続ける。
摂取タイミングは「直後だけ」では不十分で、1日の総量とバランスこそが鍵になる。
寝る前のプロテインが有効という裏付けもここから説明できる。
病気に強く、回復しやすい身体になる
筋肉はアミノ酸の“貯蔵庫”であり、病気・けが・手術の回復力に直結する。
筋トレは見た目ではなく「生命力」を底上げするという研究報告が増えている。
続かない理由は意志ではなく進化
人間は“不要な消耗を避けるよう進化した生き物”のため、筋トレは本能的にサボりやすい。
意志力ではなく、仕組みで続ける必要があるというのが現代の結論だ。
今日から取り入れられる、たった一つの行動
理解しただけでは身体は変わらない。
まずは「総負荷量」を意識するだけでいい。
重量が軽くても問題ない。今できる重さで“回数をやり切る”ことが大切だ。
今日やること
1セット、いつもより「3〜5回だけ多く」動かす。
たったこれだけで、総負荷量は確実に増える。
痛みが出ない範囲で、軽めの重量でも十分に効果がある。
回数を積み上げる感覚がつかめると、トレーニングの手応えが変わる。
明日に疲れを残さない終わり方
筋トレは、正しい知識が入るだけで“つらい作業”から“成果の見える作業”に変わる。
重さに縛られず、総負荷量を動かす。
タンパク質は24時間の流れでとらえる。
続けられない自分を責めず、仕組みで整える。
これらを押さえておけば、今日のトレーニングは確実に意味のあるものになる。
小さく積み上げれば、身体は必ず応えてくれる。

