親の「よかれ」の言葉が、なぜ子どもを苦しめるのか
朝急かしたとき、絵を見て口を挟んだとき、やらない子に叱ったとき。
その場では「正しいことを伝えただけ」と思っていても、子どもはまったく違う意味で受け止めていることがある。
急かされれば「できない自分はダメなのかも」。
指摘されれば「僕のやり方じゃだめなんだ」。
叱られれば「気持ちはわかってもらえない」。
良かれと思った言葉ほど、子どもの心には“否定”として届きやすい。
そして、その積み重ねは「挑戦しない」「自信が持てない」「頼りすぎる」といった行動につながっていく。
この本が伝えるのは、特別なテクニックではなく、
視点を“親”から“子ども”に移すだけで、会話は自然に変わるというシンプルな原則だ。
子どもが伸びる家庭は「評価」ではなく「認める」が中心にある
子どもの自己肯定感は、日常の何気ない言葉で育つ。
中心にあるのは「正しい行動を教えること」ではなく、
子どもの判断や気持ちを“そのまま認める”ことだ。
子どもは親の価値観よりも「見てもらえた」事実に反応する
大人から見ればただ遊んでいるように見える瞬間でも、
子どもは工夫し、集中し、挑戦している。
その行動を認められると、「自分は大丈夫」という感覚が育つ。
逆に、当たり前の行動ほど親は無反応になりがちだが、
子どもにとっては「座れた」「待てた」「できた」がすべて成長の証。
この積み重ねが、後の学習意欲や挑戦心につながっていく。
「やりたくない」の裏側には、必ず理由がある
子どもが語彙の少なさゆえに一言で済ませてしまうだけで、
本当は「怖い」「一人は不安」「タイミングじゃない」など、多くの気持ちが隠れている。
親がその気持ちに言葉を与えることで、
子どもは自分の感情を整理し、行動に踏み出すことができる。
叱る・ほめるよりも、事実をそのまま受け止める
「上手だね!」の連発は、子どもを“評価待ち”にする。
一方で、「黙って見守る」だけでは届かない。
大事なのは、
子どもがしている“事実”に気づき、それを言葉にして返すこと。
それが、子どもの自律を支える土台になる。
今日からできる“認める言葉”の始め方
難しいことは不要。
今日ひとつだけ変えるなら、次の行動が最も効果的だ。
子どもの行動を「三秒だけ観察」してから言葉にする
急いで声をかけるのをやめて、
まず三秒だけ子どもが何をしているか観察する。
そのうえで、見えた事実をそのまま言う。
例としては、こんな短い言葉で十分だ。
- 「積むのに集中してるね」
- 「ここを工夫したんだね」
- 「座って待ててるね」
- 「いまはやりたくない気分なんだね」
評価ではなく、感想でもなく、ただの観察。
これだけで、子どもは「わかってもらえた」と感じ、
次の一歩を自分で選べるようになる。
言葉を軽く変えるだけで、親子の毎日は自然にラクになる
「子どもを認める」と聞くと、大きなことをしなければと思いがちだ。
しかし実際は、
- 叱る前に一つ認める
- 直す前に一度見る
- 教える前に気持ちを受けとる
この順番を守るだけで、子どもの表情も行動も大きく変わっていく。
親が完璧を目指す必要はない。
一日に一度だけ、子どもがしている「小さな事実」を認める。
それだけで、自己肯定感という“器”は、静かに、確実に大きく育っていく。

