日常の小さな「モヤモヤ」は、なぜ消えないのか
勉強が続かない、作業が進まない、人に伝わらない。
生活や仕事のどこかで“止まる瞬間”が生まれると、多くの人は「やり方が悪い」と考えがちだ。
『実践 スタンフォード式 デザイン思考』は、この停滞の原因をもっと根本に置く。
私たちは、問題を正しく捉える前に解決しようとしてしまう。
この順番のズレが、迷いや重さの正体になる。
ここでは、そうした日常の停滞を軽くするために、
まず「見え方」を整え、その後で今日から試せる一つの行動につなげていく。
問題を正しく捉えるための視点
デザイン思考の要点は、答えを探すことではなく、
今扱っている問題が本当に扱うべき問題なのかを確かめるところにある。
「集中できない」「続かない」「伝わらない」──
こうした言葉は“症状”であって、問題そのものではない。
その裏側にあるのは、もっと具体的な事実だ。
- どの瞬間に手が止まったか
- 何を避けたか
- どこで表情が変わったか
- どんな前提に縛られていたか
問題は“言葉”よりも“行動”に現れる。
観察という基礎
観察とは、解釈を加えず、起きた行動をそのまま見ることだ。
例:
- 手が止まった
- 視線がそれた
- ため息が出た
- 説明を飛ばした
- 同じ箇所を読み返した
これらは、本人が言語化していない“負荷の場所”を示している。
観察が深くなるほど、「集中できない」ではなく
“集中が途切れた瞬間”が見えてくる。
問いをつくる
行動の事実をもとに問いをつくると、行動の方向が自然に決まる。
例:
- 視線が外れるのはどの瞬間か
- 相手の表情が変わったのはどの言葉か
- 手が止まったのは何を見たときか
問いを変えるだけで、問題の扱い方が変わり、行動は勝手に動き始める。
今日から試せる一つの実践
理解だけでは状況は変わらない。
ここでは、読んだその日から試せる“1分の実験”を紹介する。
扱う行動はひとつだけ。
問題を言葉のまま扱わず、問いに書き換えてみる。
1.小さな“モヤり”を一つ選ぶ
軽いもので構わない。
- 気が散った
- 人に伝わらない
- 作業が止まった
- やる気が薄い
まずは「選ぶだけ」で十分だ。
2.事実を三行だけ書く
例:
- 机に向かったがスマホを触った
- 相手の反応が止まった
- 白紙を前に手が止まった
理由は書かず、起きたことだけを書く。
3.違和感が出た瞬間を一つ抜き出す
例:
- 通知が目に入った
- 「でも」と返された
- 真っ白な紙が視界に入った
“瞬間”を特定すると、問題が急に具体的になる。
4.問いへ書き換える
型はひとつでいい。
「◯◯が起きるのはどの瞬間で、何が引き金になっているのか」
問いが定まると、次の一歩が自然に見えてくる。
5.明日ひとつだけ試す行動を決める
例:
- スマホを視界から外す
- 最初の一文を変える
- ラフを書いて人に見せる
- 声に出して説明する
重くしすぎないことが大切だ。
まとめ
この記事は、デザイン思考を知識として増やすためではなく、
あなたの行動をひとつだけ変えるために書いている。
必要なのは次の四つだけ。
- 行動を事実として見る
- 違和感の瞬間を押さえる
- 問いへ書き換える
- 小さく試す
この流れだけで、日常の「進まない」は確実に軽くなる。
どんな場面でも使える、静かだが確かな思考の道具になる。

